皆さまこんにちは。
機能性表示食品の開発・届出を支援する妖精「木ノウ精」です。
富士山のふもとの三生医薬から機能性表示食品の開発に役立つ情報をお届けします。
記念すべき第1回は機能性表示食品の基礎的な情報について、2024年11月27日に執筆しています。
機能性表示食品とは、科学的根拠を基に商品のパッケージに機能性を表示したものです。
ここでの機能性とは、未成年や妊産婦を除く、疾病に罹患していない方(つまり、健康な成人)を対象として、有効成分(機能性関与成分といいます)によって健康の維持・増進に役立つ特定の保健の目的、例えば、「血圧が高めの方の血圧を下げる」や「おなかの調子を整える」などが期待できることを言います。
これらの機能性を表示するために事業者は、必要な書類を消費者庁に届出する必要があります。その届出資料に形式上の不備がなければ、届出した内容が消費者庁のウェブサイトに公開されます。不備がない資料を届出した日から60日してから機能性表示食品を販売することが可能となります。
この記事では、機能性表示食品を開発して販売するための注意点などをまとめているので、
皆さまが機能性表示食品を届出する際やその後の販売にぜひお役立てください。
1. 機能性表示食品の市場動向
機能性表示食品制度が創設された2015年から10年が経過していますが、その市場は右肩上がりに拡大しています。矢野経済研究所による健康食品市場の調査結果から2022年以降の機能性表示食品の市場規模、成長トレンド、主要な消費者層について以下に整理しています。
1.1. 市場規模と成長トレンド
機能性表示食品の市場は着実に拡大を続けています。サプリメント形状の機能性表示食品の2022年度の市場規模は前年度比19.4%増の2039億円、2023年度はさらに4.1%増の2123億円と予測されており、2024年度にはさらに4.0%増の2208億円に達すると見込まれています1。
1.2. 健康食品市場における位置づけ
健康食品市場全体における機能性表示食品(サプリメント形状)の構成比は、2022年度に23.0%と2割を超え、2024年度には24.2%に達すると予測されています1。これは機能性表示食品の存在感が市場で急速に高まっていることを示しています。
1.3. 販売チャネルの動向
健康食品市場全体になりますが、コロナ禍での行動抑制によって通信販売における需要増加がありましたが、2022年度は、国内での人流が回復したことから、通信販売においては、その需要増加からの反動による落ち込みが見られました。一方で、ドラッグストアを含む薬系ルートが大きく伸長し、コンビニエンスストアを含む食系ルートでの販売も復調しています1。
1.4. 消費者層と需要傾向
高齢者層を中心に健康・長寿への関心が高まり続けており、健康・美容効果が期待される食品への需要が今後も増加すると考えられています1。
1.5. 将来展望
食品市場においては、何らかの機能性を有する食品の選択肢が多様化しています。サプリメント形状の食品については、継続摂取に適した形状であり、健康・美容の維持や増進の手段の一つとして、一定の需要に支えられて緩やかな成長が続くと考えられています1。特に継続的な摂取が求められることが多い機能性表示食品においては、今後もサプリメント形状の食品の需要は大きいと思われます。
これらの情報から、機能性表示食品市場は着実に成長を続けており、消費者の健康意識の高まりとともに、今後もさらなる拡大が期待されていることがわかります。
表示されている機能性についても、各社工夫が進んでいます。2024年に届出されたものでは、「空気の乾燥に伴う一時的なのどの乾燥感を軽減」、「40代以降の方の視力の維持をサポート」、「中高年男性の、心理面(加齢により低下を感じやすい落ち着いた気分、加齢により低下を感じやすい意欲的な気分、楽しく穏やかな気分)を維持」などの新しい機能性が追加されていて、新たな市場形成により、さらに機能性表示食品市場は拡大していくものと予想されます。
2. 法区分と届出プロセス
2.1. 機能性表示食品の位置づけ
「健康食品」という言葉は、法令上定義されておらず、「広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの」の総称として用いられています。そのため「いわゆる健康食品」という表現で健康食品全般を示すことがあります。機能性表示食品も「いわゆる健康食品」の1つですが、国が定めた安全性や有効性に関する基準などに従って食品の機能性が表示できる保健機能食品に分類されます。保健機能食品には、以下の3つのカテゴリーがあります。
① 特定保健用食品(トクホ)
② 栄養機能食品
③ 機能性表示食品
当然のことながら、上記の3つの保健機能食品以外のいわゆる健康食品ではパッケージや広告等で機能性について表示することはできません。
出典:消費者庁 「機能性表示食品」って何?
2.2. 機能性表示食品の法的枠組み
機能性表示食品は、食品表示法(平成25年法律第70号)第4条第1項の規定に基づく食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条第1項第10号に規定する安全性及び機能性に関する一定の科学的根拠に基づき、食品関連事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨の表示を行うものとして、消費者庁長官に届け出られたものです2。この制度の主な特徴は以下の通りです:
① 食品関連事業者の責任において、安全性と機能性に関する科学的根拠に基づいて表示を行います。
② 消費者庁長官による個別審査を経ない点で、特定保健用食品とは異なります。
③ 販売日の60日前までに、以下の情報を消費者庁長官に届け出る必要があります:
・ 当該食品に関する表示の内容
・ 食品関連事業者名及び連絡先等の基本情報
・ 安全性及び機能性の根拠に関する情報
・ 生産・製造及び品質の管理に関する情報
・ 健康被害の情報収集体制
・ その他必要な事項
④ 可能な機能性表示の範囲は、疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦、授乳婦を除く)の健康の維持及び増進に役立つ旨または適する旨を表現するものに限られます。
2.3. 特定保健用食品、栄養機能食品と機能性表示食品の違い
3つの保健機能食品でも以下のような違いがあります。
① 審査・許可制度
・ 特定保健用食品 :個別に消費者庁長官の許可が必要
・ 栄養機能食品 :国が定めた規格基準に適合すれば届出不要
・ 機能性表示食品 :事業者が科学的根拠に基づき機能性を表示し、販売前に消費者庁長官へ届出が必要
② 表示できる機能性の範囲
・ 特定保健用食品 :国の審査により許可された特定の保健の目的が期待できる旨を表示
・ 栄養機能食品 :特定の栄養成分について国が定めた機能を表示
・ 機能性表示食品 :事業者の責任で科学的根拠に基づいた機能性を表示
③ 表示できる成分
・ 特定保健用食品 :in vitro試験、in vivo試験、またはヒト試験による作用、作用機序、体内動態に関する知見が国の審査により認められた保健の効能を示す関与成分
・ 栄養機能食品 :ビタミン、ミネラル、n-3系脂肪酸(計20種類)
・ 機能性表示食品 :in vitro試験、in vivo試験、またはヒト試験により機能性に係る作用機序が考察でき、定性・定量分析が可能な成分(機能性関与成分)
④ 科学的根拠の提示方法
・ 特定保健用食品 :原則としてヒト試験が必須
・ 栄養機能食品 :国が定めた基準値の範囲内に表示される成分が含まれていれば可能
・ 機能性表示食品 :最終製品を用いた臨床試験か、研究レビューによる科学的根拠の提示が必要
⑤ 表示マーク
・特定保健用食品 :許可マークあり
・ 栄養機能食品 :マークなし
・ 機能性表示食品 :マークなし
機能性表示食品は、事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性を表示できる点が特徴です。販売前に消費者庁のウェブサイトで情報が開示されることにより、消費者が自主的かつ合理的に食品を選択できるようになっています。
2.4. 機能性表示食品の届出プロセス
① 届出データベースへの登録
食品関連事業者は、消費者庁の「機能性表示食品制度届出データベース」にアクセスし、基本情報を登録してユーザーIDを取得します。
② 届出書類の作成
消費者庁が定めた様式に従って、以下の内容を含む届出書類を作成します:
・ 安全性の根拠
・ 生産・製造及び品質の管理
・ 健康被害の情報収集体制
・ 機能性の根拠
・ 表示の内容(パッケージデザイン)
・ 作用機序
③ 届出書類の提出
作成した書類を消費者庁が整備する「機能性表示食品届出データベース」を用いて提出します。
④ 消費者庁による確認
消費者庁食品表示課が、提出された届出書類に形式上の不備がないかを確認します。不備がある場合は差戻しがあり、修正後に再提出が必要です。
⑤ 受理と公表
書類に不備がないことが消費者庁により確認されると、受付完了メールで届出番号が送られてきます。
届出情報は消費者庁のウェブサイトで公表されます。
⑥ 販売開始
届出番号をパッケージデザインに追加し製品を生産後、機能性表示食品として販売を開始することができます。
※注意点:
届出後も消費者庁による検証事業でチェックが行われ、資料修正や届出撤回にいたる可能性があります。
3. 届出後や販売する上での注意点
3.1. 機能性関与成分量の管理(下限値保証)
機能性関与成分の含有量は消費期限または賞味期限を通じて含有する一定の値または下限値及び上限値により表示するとされています。つまり、パッケージなどに表示した機能性関与成分の含有量は消費期限や賞味期限の間、下回ってはいけないことになります。
消費者庁のNews Release(2024年3月1日)によると、2022年におこなわれた消費者庁による市販品の買上調査「令和4年度特別用途食品(特定保健用食品を除く。)に係る栄養成分等、特定保健用食品に係る関与成分及び機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業(買上調査)」では機能性表示食品103製品の機能性関与成分量を分析した結果、1製品において製造時の品質管理が十分に行われておらず、流通段階で機能性関与成分が減衰して含有量が表示値を下回る分析結果となり、販売の中止、届出の撤回となっています3。
3.2. 広告表現
機能性表示食品制度は届出者の工夫次第で、製品に魅力的な機能性を記載することができる制度ですが、広告などで自由に表現してよい制度ではありません。広告表現においては景品表示法や健康増進法など関連法規にも注意しながら販売をしていかないといけません。これまでに機能性表示食品の広告表現で措置命令がでたことも複数件ありますので、ご注意ください。
3.3. 健康被害情報の扱い
2024年に紅麹原料を含む機能性表示食品に製造段階で青カビが混入し腎障害を引き起す成分が含まれていたことで多くの方が腎障害を示す健康被害が発生するという事故がありました。この事故が発生した原因の1つとして、製品と健康被害の因果関係の判断が遅れてしまったことがあります。これを受けて、機能性表示食品制度が見直しされ、健康被害発生時の行政への報告方法が見直されています。
医師による診断があり製品との因果関係が不明であっても消費者庁および保健所へ報告する必要があります4。また、報告の期限として重篤事例が1例の場合は、医療機関名を知った日から15日以内、また重篤・非重篤にかかわらず概ね30日以内に同じ所見の症状が複数発生した場合に、複数発生したことを知った日から15日以内とされています4。これは2024年9月1日に施行され即日実施となっています。遵守できてない場合は、機能性表示の差し止めや営業禁止・停止の行政措置が可能となっているので注意が必要です5。知らなかったでは済まされない事項です。届出資料上だけで終わらせるのではなく、届出者の方々は健康被害の連絡があった時にどういう対応が必要かということを社内の関連部署に共有してシミュレーションなどしながら体制を構築する必要もあるのではないでしょうか。
機能性表示食品は事業者の責任において表示されるものです。
機能性表示食品の届出資料の作成からWebサイトでの届出作業まで、すべてを代行してくれるOEMやコンサル企業もありますが、それらの企業に任せきりで届出者が届出内容や制度のことをよくわかっていないというのは、本来は好ましい状態ではありません。
実際に、届出者の理解が不十分であったがゆえに起こった問題や行政処分もあります。
機能性表示食品制度の要点や届出内容を正しく理解し、適切な制度運用や消費者への情報提供を行うにあたり、この記事が少しでもお役に立てたら嬉しいかぎりです。
機能性表示食品の開発や届出に関するお困りごとや相談がありましたら、こちらのお問い合わせよりお気軽にご連絡ください。
■参考資料
1. 健康食品市場に関する調査を実施(2024年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3467
2. 機能性表示食品の届出等に関するマニュアル
3. 令和4年度特別用途食品(特定保健用食品を除く。)に係る栄養成分等、特定保健用食品に係る関与成分及び機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業(買上調査)
4. 機能性表示食品等に係る健康被害の情報提供の義務化について
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001298189.pdf
5. 機能性表示食品の今後について
https://www.caa.go.jp/notice/assets/food_labeling_cms201_240823_01.pdf