皆さんこんにちは。
機能性表示食品の開発・届出を支援する妖精「木ノウ精」です。
富士山のふもとの三生医薬から機能性表示食品の開発に役立つ情報をお届けします。
この記事は、2024年11月28日に執筆しています。
今や多くの商品があふれ、競争が激化する健康食品市場において消費者に選ばれる商品を開発するためには、「効果があるかもしれない」ではなく、科学的根拠に基づいて明確な機能性の表示ができる「機能性表示食品」 がもはや必須となりつつあります。
しかし、機能性表示食品を開発・販売するために必要な「消費者庁への届出」を行うためには、科学的根拠や安全性情報を揃えるといった様々な要件を満たす必要があり、プロセスは決して簡単ではありません。はじめて機能性表示食品の届出を行う多くの企業が「何から始めればいいのか」「どのように進めれば効率的なのか」と悩んでいるのが現状です。
そこで本記事では、機能性表示食品の届出内容と具体的な進め方を分かりやすく解説します。商品企画担当者の方が実務に即活用できるよう、必要な情報を網羅し、ステップごとにわかりやすく整理しています。ぜひこの記事を参考に機能性表示食品の届出準備を進めてみてください。
1. はじめに:機能性表示食品届出の重要性と市場価値
競争が激化する健康食品市場において、科学的根拠によって裏付けられた具体的な機能性を訴求することができる機能性表示食品が求められているということは、冒頭お伝えしたとおりです。機能性表示食品を開発・販売するために届出は不可欠なステップですが、届出資料に記載すべき内容は非常に多く、また専門性が高いことに加え、手続きが非常に複雑です。
そのため、届出の内容やプロセスを正しく理解していないと、余計な時間やコストがかかり、商品発売までの計画が遅れるリスクがあります。
スムーズに届出が受理され、計画通りに開発した機能性表示食品を世に送り出すためには、適切な届出資料の作成方法について知ることが重要です。この記事で届出に関する基礎的な知識を身につけ、スムーズな届出の受理を目指しましょう。
それでは、機能性表示食品の届出に必要な内容と手順を見ていきましょう!
2. 機能性表示食品届出の概要
機能性表示食品は、企業の責任において科学的根拠をもとに商品パッケージに「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」といった具体的な機能性を表示することができる食品です。
機能性表示を行うためには、安全性や機能性の根拠に関する情報、健康被害の情報収集体制などの必要な事項を、商品の販売前に消費者庁長官に届出る必要があります。
2-1. 届出制の基本ルール
まずは届出制の基本ルールとして、次の2点を知っておく必要があります。
① 消費者庁への届出が必要
機能性表示食品を販売する前に、消費者庁に届出を行う必要があります。この届出では、商品が持つ機能性に関する科学的根拠や安全性の確認資料、表示内容などを届出資料としてまとめて提出します。
② あくまで“届出”であって、審査ではない
特定保健用食品(トクホ)とは異なり、国による安全性や機能性の審査は行われません。消費者庁に届出をすると、消費者庁が内容を確認し、届出資料に形式上の不備がなければ届出が公表されます。届出が公表された後に、商品を市場に投入することが可能となります。
審査ではないので、届出内容については企業が責任をもたなければならないことに注意が必要です。
2-2. 届出がスムーズに受理されるために気をつけるべき3つの柱
機能性表示食品の届出がスムーズに受理され、計画どおりに市場投入するためには、次の3つの柱が重要です。それぞれが届出の基盤となる要素となっています。
① 安全性の確認
安全性の確認は、消費者に機能性表示食品を安心して利用してもらうために最も重要なポイントです。どれほど優れた機能性をもっていても、安全性が担保されなければ消費者の信頼を得ることはできず、届出も受理されません。安全性の評価方法には、今までにどのくらい広い範囲でどのくらいの期間食べられてきたかという食経験、安全性に関する文献の調査、動物やヒトを用いた安全性試験の3つがあります。
この他に、医薬品との相互作用や、複数の機能性関与成分が含まれる場合は、成分同士の組み合わせによる影響についても評価が必要です。
② 科学的根拠の確保
安全性が確認されたうえで、次に重要になるのが表示する機能性を裏付けるデータです。機能性表示の根拠となる信頼性の高いエビデンスが望まれます。
機能性は、臨床試験と研究レビューのいずれかによって評価され、エビデンスの内容や評価方法の違いに応じた機能性の表示(表現)を行う必要があります。
③ 適切な表示
安全性と機能性が確認できたら、消費者に誤解を与えないよう、商品パッケージに適切な表示をする必要があります。表示内容は、消費者庁への届出と商品の販促物の双方で一貫していなければなりません。機能性の表示や消費者の安全を守るための表示はもちろんのこと、消費者に誤解を与えるような誇大表現 や医薬品と混同されるような表現をしないようにも注意が必要です。
3. 届出に必要な準備と届出内容
3-1. 基本情報の準備
① 届出に必要な基本情報
基本情報としては、主に届出を行う事業者の情報が必要です。
具体的には会社名や所在地、消費者庁とやりとりを行う担当者の情報などが該当します。法人の場合は法人番号も必要になるので確認しておきましょう。
② 適切な食品区分の選定
機能性表示食品の届出では、食品の区分として3つが指定されています。この区分は後の届出内容や表示ルールに影響するため、届出時に適切に分類する必要があります。
食品区分 | 例 |
サプリメント形状の加工食品 | 錠剤、カプセル、粉末 など |
その他加工食品 | 飲料、菓子、調味料 など |
生鮮食品 | トマト、みかん、卵、マダイ など |
3-2. 安全性の評価
届出しようとする食品の安全性については、食経験及び文献などの既存情報、安全性試験データ、機能性関与成分と医薬品との相互作用等の観点から評価を行います。評価は次のようなフローに沿って行い、届出資料もこの順に沿って記入するようになっています。
① 食経験の評価
届出しようとする食品又は類似する食品、届出をしようとする食品に含まれる機能性関与成分について十分な摂取実績があるかを確認します。
想定している摂取対象、機能性関与成分の摂取量、摂取期間を考慮して評価する必要がありますが、「これだけの食経験があれば十分」と言える基準は明確に示されておらず、届出をする企業の責任において判断する必要があります。食経験が不十分と判断した場合は、次のステップに進みます。
② データベースや文献情報による評価
届出しようとする食品又は届出をしようとする食品に含まれる機能性関与成分の喫食実績や安全性試験結果について文献等の既存情報をもとに調査します。まずは公的機関のデータベースや研究者等が作成した2次情報 から情報を収集し、情報が不十分な場合は1次情報としてヒト臨床試験を行った文献を検索して安全性を調査します。2次情報または1次情報で過剰摂取時及び長期摂取時における安全性が評価できるか判断します。それでも安全性を確認できる十分な情報がない場合は、実際の試験データが必要になります。
③ 安全性試験の実施による評価
文献等の既存情報から安全性が十分に確認できない場合は、安全性に関するin vitro試験及びin vivo試験、ヒト臨床試験の実施が必要です。臨床試験では、過剰摂取時及び長期摂取時における安全性を評価できる試験を実施します。
④ 機能性関与成分等の相互作用に関する評価
医薬品との飲み合わせ等による健康被害を防止するため、消費者に対し摂取上の注意を促す必要があることから、届出しようとする食品に含まれる機能性関与成分と医薬品の相互作用の有無を評価する必要があります。また、複数の機能性関与成分を含む場合は、その成分同士の相互作用についても評価します。
3-3. 製造及び品質管理情報
製品の品質を維持し、機能性関与成分の含有量や安全性を確保するための製造及び品質管理の体制や機能性関与成分の分析方法を示す情報です。加工食品と生鮮食品とで求められる情報のレベルが異なっています。サプリメント形状の場合は、2024年9月1日に施行された食品表示基準の一部改正により、GMPに基づく製造管理が必須となりました。
■生産・製造及び品質管理の体制
① サプリメント形状の加工食品、その他の加工食品の場合の記載事項
・製造施設・従業員の衛生管理体制
・機能性関与成分を含有する原材料の一般的な名称
・届出しようとする食品の製品規格
・規格外の製品の流通を防止するための体制等
※機能性関与成分を含む原材料がエキスの場合は、これらに加えて原材料(エキス)の規格やエキスの同等性を担保する方法等についても記載が必要になります。
② 生鮮食品の場合の記載事項
・生産・採取・漁獲等における衛生管理の取組状況について
・生鮮食品の均質性とその管理体制
・届出をしようとする食品の製品規格
・規格外の製品の流通を防止するための体制等
・届出者以外の者が容器包装に梱包して表示を行う場合の取決め事項
■届出食品の分析
① 分析に関する資料
機能性関与成分及び安全性を担保する必要がある成分に関する定性試験及び定量試験の分析方法を示す資料と、実際の分析結果(試験成績書)を届出資料に添付する必要があります。
② 届出後の分析に関する情報
機能性関与成分及び安全性を担保する必要がある成分について、届出後に実施される分析の方法や、試験項目、頻度等を記載する必要があります。
3-4. 健康被害の情報収集のための体制構築と対応フローの整備
健康被害の情報の対応窓口部署名や、情報を受ける電話番号、受付時間などを届け出る必要があり、健康被害に関する情報の収集、評価、行政機関への提供等に関するフローチャートとフローに関わる部署の位置づけが明記された組織図を用意する必要があります。
3-5. 科学的根拠の確認
機能性を裏付ける手段として、「臨床試験」と「研究レビュー」の2つがありますので、届出にあたってはいずれかの資料を用意する必要があります。
① 機能性を説明する資料の種類
(ア) 最終製品を用いた臨床試験(ヒト試験)
(イ) 最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー
② 届出する項目と資料
(ア) 臨床試験(ヒト試験)の場合
臨床試験(ヒト試験)に関する査読付き論文に加え、一般消費者向けにわかりやすい言葉でまとめた抄録を用意する必要があります。
(イ) 研究レビューの場合
公表された研究レビュー論文がある場合はそれを使用できますが、適切なレビュー論文がない場合がほとんどです。ご自身で研究レビューを作成する場合は、設定したリサーチクエスチョン、文献検索の条件、レビューに用いた論文の一覧、各論文やエビデンス全体の質の評価結果などを、届出様式に沿ってまとめる必要があります。研究レビューについては、原料メーカーが提供してくれるケースも多いため、研究レビュー付きの機能性原料を選択するというのも一つの手です。
3-6. 表示内容の検討とパッケージデザインの作成
届出にあたっては、表示内容に加え実際の表示見本を提出する必要があります。
「摂取上の注意」のように、届出しようとする食品の安全性情報にもとづいて表示内容を検討しなければならない項目もありますが、大部分は食品表示基準に則って表示内容を用意します。
容器包装には、定型文として必須の表示項目の他に届出食品のアピールポイントを表示したり、機能性を強調して書くことがありますが、科学的根拠と整合性が取れているか(科学的根拠から言える範囲を越えて優れているかのような誇大表現になっていないか?)、消費者に誤解を与える表現になっていないかチェックすることが大切です。文字だけではなく、イラストなども含めたパッケージデザイン全体として、科学的根拠から言える範囲を超えないようにすることも大切です。
出典:消費者庁食品表示課「機能性表示食品の今後について」2024年8月
4. 届出の具体的な手順
4-1. 基本情報の届出とIDの取得
実際の届出作業は、消費者庁の「機能性表示食品届出制度データベース」から行うことになりますので、初めて届出をする際には、まずはデータベースを利用できるようにするために、基本情報の届出をする必要があります。
受付が完了すると、データベースの利用に必要なユーザーIDが発行されます。
4-2. 届出書類の準備
3で準備した情報や資料をもとに、消費者庁のホームページ(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/notice/#notify)で提供されている「届出様式(word及びexcelファイル)」に必要な情報を入力します。入力が終わった届出様式はPDFにして、データベースに添付できる状態にします。PDFは文書のプロパティからセキュリティ設定をしておきます。
4-3. データベースへの届出情報の入力
データベースにログインして、届出に必要な情報を入力していきます。
処理メニューから「機能性表示食品届出」を選択して表示される「届出食品基本情報一覧」の画面を起点に、様式ⅠからⅦまでを入力、併せて必要な添付ファイルを登録します。
出典:消費者庁「届出マニュアル」をもとに作図
4-4. 届出内容の確認と届出
すべての入力と資料の添付が終わったら、各項目がヌケモレなく適切に埋まっているか、添付資料の不備がないか等をチェックします。
問題がなければ、すべての様式の作成状況が「作成完了」になっていることを確認し、最後にチェックリスト(別紙様式2)を添付して「送信」ボタンを押します。
4-5. 届出後の対応
届出後は、消費者庁が届出内容に不備がないか形式的な確認を行い、通常は1~2ヶ月程度(60日以内)で届出受付又は差戻しの連絡がきます。
ただし、2024年9月1日に施行された食品表示基準の一部改正により、2025年4月以降は確認期間が「60営業日」、新規の機能性関与成分の場合は「120営業日」まで延長されますので、届出食品の販売スケジュールを引く際にはご注意ください。
4-6. 差戻し対応
届出情報に不備があった場合は、消費者庁から差戻しメールが届きます。
届出データベースの「機能性表示食品 届出食品基本情報詳細」画面を見ると、差戻しになった様式と差戻しコメントが確認できるので、コメントをもとに対象の様式を修正して再度届出します。
5. 届出成功のポイント
5-1. 実務でつまずきやすいポイントとその対策
① データベースや添付資料の入力ミス
■よくあるミス
・入力ミス
・入力漏れ
・添付資料の間違い
・古い様式を使用している
■対策
このようなケアレスミスをしてしまうと、せっかく届出内容が適切であっても2ヶ月をムダにしてしまうことになるので、ダブルチェック体制を敷くなどの対策をおすすめします。
② 届出マニュアルの理解不足
■よくあるミス
・チェックの付け方が不適切
・記載箇所が間違っている
・添付資料の内容が不十分
■対策
届出マニュアルの理解が十分でないと、届出に必要な情報の選択や、どの項目に何を記載したらよいかがわからずミスにつながってしまいます。
届出マニュアルを熟読することに加え、特に初めての届出の場合は、専門家やコンサルタントにチェックしてもらうと安心です。
③ 科学的根拠に関する不備
■よくあるミス
・使用する文献や試験データが不適切(試験の対象者や評価指標、届出食品への外挿性など)
・研究レビューのやり方が不適切
・研究レビューの評価が不適切(totality of evidenceの判断が適切になされていない)
■対策
届出マニュアルに沿って作成を行いましょう。特に研究レビューについてはPRISMA声明チェックリストを活用して適切かつ十分な内容が記載されているかを確認しましょう。専門家に作成やチェックを依頼するのも有効です。
④ 表示の不備
■よくあるミス
・届出様式と表示見本とで不整合がある
・表示見本に表示必須項目が抜けている
・表示見本で機能性関与成分以外の成分が強調されている
・医薬品的な表現になっている
■対策
食品表示基準に沿った表示のチェックや、届出マニュアルにある「可能な機能性表示の範囲」におさまる表現になっているかどうかをチェックしましょう。
⑤ 科学的根拠と表示しようとする機能性の不一致。
特に指摘を受けやすいポイントです。
表示しようとする機能性について、科学的根拠に基づく適切な記載であるかを確認の上、修正することを求められます。
6. まとめ
機能性表示食品の届出内容は、安全性や機能性、製造及び品質管理の体制、表示内容など多岐に渡り、適切な内容を準備するためには専門知識が不可欠です。また、届出作業自体も複雑なため、ミスなく効率よく届出をするためにはある程度の慣れが必要になります。ちょっとしたミスを防ぐにはチェックリストの作成やダブルチェックが有効ですが、専門知識や経験は一朝一夕で身につけられるものではありませんので、特に初めての届出では専門家の力を借りることをおすすめします。
有料で届出資料の作成を代行してくれるコンサルタントや、自社が扱う原料の安全性や機能性に関する届出資料を提供してくれる原料メーカーなど、機能性表示食品の届出をサポートしてくれる企業はさまざまあります。特に健康食品のOEMには、製造を委託することで機能性表示食品の要件にあった製品設計や製造をしてくれるだけでなく、届出資料全般の作成をサポートしてくれる企業が多くあります。
機能性表示食品の製造を委託する場合には、届出サポートが充実したOEM企業を選択するのが届出成功の近道になるでしょう。
もちろん三生医薬でも機能性表示食品の届出サポートを行っています。機能性表示食品の開発や届出等に関してご不明点やお困りごとがありましたら、こちらのお問い合わせよりお気軽にご相談ください。
■参考資料
1. 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関するマニュアル」
機能性表示食品の届出等に関するマニュアル(令和6年8月30日制定)
2. 消費者庁「機能性表示食品制度届出データベース 届出マニュアル(食品関連事業者向け)」
3. 「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」
4. 機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の製造又は加工の基準(令和6年内閣府告示第108号)