機能性コラム

2025.02.12

投稿日 2025.02.03

初心者のための機能性表示食品開発:2025年4月からの新基準PRISMA2020とは?

機ノウ精くん

木ノウ精くん

皆さんこんにちは。
機能性表示食品の開発・届出を支援する妖精「木ノウ精」です。
富士山のふもとの三生医薬から機能性表示食品の開発に役立つ情報をお届けします。
この記事は、2025年1月30日に執筆しています。

1. はじめに

機能性表示食品の開発に興味がある、はじめようと考えている方で「SR(エスアール)」や「PRISMA(プリズマ)」という言葉を聞いて、「?」となったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に最近では、「SRがPRISMA2020に対応していないと・・・」という話もあり、更に「???」なんてことも。聞いたことがない横文字ばかりで一体なんのことやらという方も多いと思います。私たちは機能性表示食品の開発のプロなので、今でこそこういう言葉は理解していますが、機能性表示食品制度が始まった当初は皆さんと同じような状態でした。
10年以上かけて得た知識をもとに、これから機能性表示食品を開発したいという方に向けて、用語の解説から、機能性表示食品制度におけるSRやPRISMAに関連することで、いま何が起きていて、今後どんな問題が起こりそうなのか?ということを分かりやすく解説していきます。

2. SRとは

これまでの機能性コラム(第2回 機能性表示食品の届出について)で、機能性表示食品の開発をするときどのような届出資料を作成するのかということをお伝えしてきました。その中でも少し触れていますが、機能性表示食品の届出をするときには機能性を裏付ける科学的根拠として、臨床試験もしくは研究レビューのいずれかで評価することが必要です。

この研究レビューが本来、SR、正式にはSystematic Review(システマティック・レビュー)と呼ばれるものです。

SRとは、ある課題に対して(例えば、ホヤ由来プラズマローゲンが健康な人の認知機能を改善するか?など)類似した個別の研究をできるだけ系統的かつ網羅的に見つけ出し、選択し、評価し、まとめる研究方法の1種です。機能性表示食品制度においてはヒトで有効性を評価した臨床試験などの結果を幅広く収集して、その有効性を評価します。ここでのポイントとしては、有効性があるとする論文も、有効性がないとする論文も併せて評価する必要があることです。恣意的に有効性があるとする論文だけを集めて評価することはできません。

機能性表示食品制度の届出資料としては、「研究レビュー」という名称ですが、実施する方法としてはSRとなります。ちょっとややこしいですが、「研究レビュー」=「SR:システマティック・レビュー」と認識していただいて問題ありません。機能性関与成分を含む原料を販売している原料メーカーなどが、機能性表示食品に対応している原料(機能性関与成分)としてSRを準備してくれているので、それらを活用するのが良いでしょう。

3. PRISMA2020とは?SRとの関係は?

上述したようにSRとは機能性表示食品において、機能性を裏付ける科学的根拠を示す1つの方法です。それを、具体的にどういうことを記載するのかという指針が示してあるのが「PRISMA声明」です。PRISMA声明にはSRにおいて記載しなければいけない項目が示されていますので、その項目に従って書類を作成していく必要があります。PRISMA声明自体は機能性表示食品制度のためにつくられたものではなく、広くヘルスケア関連の研究においてSRを実施する際の国際的な指針としてつくられたものです。もともと、機能性表示食品制度が開始した2015年当初は、PRISMA声明は初版である2009年版が国際的にも使用されていたので、機能性表示食品におけるガイドラインでもSRの作成においてはPRISMA声明(2009年)(以降、PRISMA2009)に準拠したものが求められていました。しかし、PRISMA声明は、SRを作成するにあたり、その透明性や確実性をより確保できるように2021年にPRISMA声明(2020年)(以降、PRISMA2020)が発表されました。機能性表示食品制度ではSRの作成者の多くが原料メーカーや自社で独自原料を持っている販売者となります。PRISMA2009は少し緩いガイドラインなので、若干作成者に都合の良い解釈もされていて、本来機能性についてのエビデンスが十分と言えないものも中にはあり、実際のところ、機能性表示食品におけるSRの質の低さは以前から有識者から指摘されていました(上岡, 2023)。そういったこともあり、機能性表示食品の質の向上のために2023年9月29日に機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(以下、ガイドラインとします。現在は、ガイドラインは廃止されてマニュアルとして制定)が改正されSRをPRISMA2020に準拠するように変更されました。ただ、その際にはすぐに対応が難しいこともあり、2025年3月31日までの届出にはPRISMA2009準拠版が使えることになっていました。

4. システマティック・レビューの科学的根拠の質の重要性

上述したように2023年9月29日にガイドラインが改正されPRISMA2020への準拠が求められるようになりました。若干、時間が前後しますが、2023年6月末~7月にかけて、機能性表示食品の科学的根拠の質に関する重大な事件が起きました。もともとは、ある機能性表示食品(以下、商品Aとします)の広告表現に問題があり景表法違反ということで、措置命令が出たのですが、科学的根拠として商品Aと同じSRを使用している88商品について消費者庁から科学的根拠に疑義があり、食品表示法の観点から問題があるということで、すべて撤回となりました。これまでは機能性表示食品制度は届出者の責任において表示されるものであるという認識だったので、消費者庁から届出資料の科学的根拠に対する疑義がだされ、すべて撤回となったことは業界において大きな衝撃が走りました。この一連の事件が、PRISMA2020への準拠に直接関係したわけではないですが、業界のなかではSRの科学的根拠の質をより一層高めていかないといけないという認識となりました。少し乱暴な言い方ですが、それまでは、多くのSR作成者(原料メーカーなど)は、受理されているから問題ないという認識だったと思います。しかし、上述のような事件が起きたことで受理はされていたとしても科学的根拠の質に問題があるとわかった時には、売れている商品であっても撤回となり機能性表示食品として販売することができなくなってしまうリスクを持っているということがわかりました。加えて、これまでのPRSIMA2009では受理されていたものでも、PRISMA2020準拠版では同様の書きぶりでは受理されず差戻しが続いていることなどからも、機能性表示食品制度において科学的根拠の質は非常に重要なポイントとなっています。

5. これまでのヘルスクレームやSRが使えなくなる!?

ここまで説明してきたとおりPRISMA2020になることで、より透明性をもって科学的根拠の質を評価することが求められてきます。その影響で、今までのPRISMA2009のSRで使われていた論文が使えなくなったり、これまで恣意的にSRの中に入れていなかった情報・データを書かないといけなくなったりすることで、受理されなくなるヘルスクレームも一部でてくると予想されます。受理されているヘルスクレームを参考に同じヘルスクレームで届出しようとしても、今後は使うことができなくなっている可能性もゼロではないということです。過去に受理されたものだけが、そのまま販売し続けられるのはズルい感じがしますが、自己点検の導入に伴い、もしかするとすでに受理されたものにも影響する可能性があるかもしれません…。

6. 2024年最後に衝撃の発表

2024年12月26日付で消費者庁のホームページに公開された「科学的根拠の質の向上について(案)」に以下の驚きの記載がありました。

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下記の主旨を踏まえた内容を告示(案)に記載する。

○機能性の実証に係る項目(主要アウトカム評価項目、副次アウトカム評価項目、試験デザイン、介入、適格性等)に関して正規の手続きを踏まず事前登録後に実質的な変更を行った研究については、機能性表示食品の機能性に係る科学的根拠とすることはできない。

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若干内容が難しいですが、臨床試験を実施するときには事前にどのような試験をするのか登録をしておく必要があります。臨床試験で評価したい項目(主要アウトカム評価項目)は基本的には1つを設定するのですが、たくさんの項目を評価して、統計解析で偶然差が出た項目で有効性があるとしたような研究や、統計解析の段階で差がでるように恣意的に対象者を削除するような行為をした研究は捏造であり科学的根拠としてふさわしくないというものです。当たり前といえばそうなのですが、現在受理されているSRでもそのような研究が採用されている例は少なくありません。まだ案の段階ですが、告示として上述のような内容が記載されると、これまで以上に科学的根拠の質は重要となり、PRISMA2020への対応は困難となります。1報の臨床論文だけでSRがつくられていたもので、その論文が上述の理由で科学的根拠とすることができないとなると、そのSRは使えなくなってしまうという大事件です。

7. 今後の届出におけるPRISMA2020対応の重要性

ガイドラインの改正後、PRISMA2020対応への猶予期間が設けられていましたが、それも2025年3月31日まで(実際には、3月29~31日の間は機能性表示食品の届出データベースのシステム更新で停止するため、3月28日まで)です。そのため、今から届出するものはもちろんのこと、3月末までに届出をしたとしても記載内容の不備があり3月28日以降に差戻しとなるとPRISMA2020に準拠したSRが必要になります。時間と費用をかけて試作や分析をして届出資料を作成していたとしても、差戻しになった時にPRISMA2020に準拠したSRが準備されていないと、届出・発売までの計画が大きく遅れてしまいます。まだまだ多くの原料メーカーがPRISMA2020への対応が万全の状態とは言い難いと思います。原料メーカーは自社の作成したSRが受理されるレベルにあるのかを、ダミーの届出をして確認することが多いのですが、1度の受理実績があるからといって、その後も同じ内容でかならず受理されるとは限らないのが難しいところです。消費者庁が確認するポイントも少しずつブラッシュアップされている印象があります。以前は受理されていたのに・・・というのは、この機能性表示食品制度において、特に制度改正の後ではよくあることです。できるかぎりSRの科学的根拠の質が高い原料を選択するということも今後は重要になってくると思います。しかしながら、その評価は専門的であり難しいところなので、専門部署のあるOEMやコンサルに相談されるのも1つの手段だと思います。

8. まとめ

機能性の科学的根拠において大部分がSRを採用しているので、SRにおける2025年4月1日以降のPRISMA2020対応は非常に大きな変化です。結果ありきの都合の良い解釈(機能性を表現するためのいいとこどり)をするのではなく、透明性をもって機能性の根拠として十分なエビデンスがあるのかを評価をしたSRが必要となります。そのため、従来のPRISMA2009対応のシステマティック・レビューの内容では消費者庁からの差戻しが多発していて、機能性表示食品の今後の届出に大きく影響してくることは必至です。

一方で、すでに届出され販売しているものでPRISMA2009のものは影響がないのか?ということですが、現時点では、明確な対応は公開されていません。しかしながら遵守事項として、機能性について新たな知見が得られた際には報告すること、またその状況を年1回報告することが求められるようになったことから、エビデンスの質として現時点の基準で問題ないかという確認も必要になってきます。また、2025年1月1日付のウェルネスデイリーニュース(https://wellness-news.co.jp/posts/250101-1/)には、消費者庁食品表示課 保健表示室 今川正紀室長のコメントとして、「すでに届出された機能性表示食品についてもPRISMA2020準拠により科学的根拠の再検証を行うよう見直していただきたいと考えております。」とあります。上述したように、現時点では必ず対応しなければいけないというわけではありませんが、対応しなければいけなくなる可能性も考慮しながら検討することが必要かもしれません。

引用文献

上岡 洋晴 機能性表示食品制度の現状と課題―機能性のエビデンス. YAKUGAKU ZASSHI 143, 931-940 (2023)

機ノウ精くん

機能性表示食品の開発・届出を支援する妖精。

木ノウ精くん

三生医薬のオフィスや工場に出没する。
飲むと元気になる魔法の錠剤・ソフトカプセル・ハードカプセルの実が成っている。
仲良くなると、実をもぎって分けてくれるらしい。
季節によって若干見た目が変化するという噂も…。

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