皆さん、こんにちは!
機能性表示食品の開発・届出を支援する妖精「木ノウ精」です。
桜の花もピークを過ぎ葉桜となりつつある2025年4月10日、4月1日に施行された機能性表示食品制度の改正内容をいち早く皆さんにお伝えすべくこの記事を執筆しています。
今回の制度改正の内容は突然でてきたわけではなく、基本的には2024年8月に説明された内容から変わっていません。しかし、これまでマニュアルに書かれていた内容や届出様式が告示に引き上げられることにより法的拘束力が発生するため、告示で示される内容は“守らなければならないこと”になります。
食品表示法をはじめ関連する法律に違反しないために、この記事では4月1日から何が変わって、届出者としてどんな対応が必要になるのかをわかりやすく解説します。
1. はじめに:制度改正の変遷と意図
2025年3月25日に、同月18、19日の事業者向け説明会を経て「機能性表示食品の届出等告示」が公布されました。紅麹サプリメントによる健康被害の問題を受け、制度の信頼性を高めるべく見直しがなされ2024年8月23日付で食品表示基準の一部改正が行われました。健康被害情報の収集体制など一部の項目は2024年9月1日よりすでに実施されていますが、新年度となる4月1日からは、全面的に改正・機能性表示食品制度が施行されることになります。
前述のとおり、変更内容としては2024年8月の食品表示基準の一部改正から大きく変わっていませんが、ポイントはこれまで「マニュアル」にあった届出様式とその記載要領が「告示」に引き上げられたことです。今回の機能性表示食品の届出等告示は、食品表示法に紐づく食品表示基準に基づいて制定された法令であるため、改正制度は法的拘束力を持つ法令のもとで運用されることになります。
機能性表示制度を支える3つの法令
- 食品表示基準の一部を改正する内閣府令
- 機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の製造又は加工の基準(GMP告示)
- 食品表示基準第2条第1項第十号イの別表第26の1の項から6の項までの規定に基づき内閣総理大臣が告示で定める届出の方法並びに同号ロの別表第27の2の項第八号の規定及び4の項の規定に基づき内閣総理大臣が告示で定める遵守すべき事項その他の必要な事項及び報告の方法を定める告示(届出等告示)
ここからは、3月18日、19日に消費者庁により行われた説明会の内容と、3月25日に実際に出された届出等告示や手引き(届出マニュアルが廃止され、あらたに整理されたもの)の内容を踏まえて、制度の変更点と気をつけるべきポイントについて説明していきます。
2. GMPの要件化について
製造工程管理による製品の品質確保を徹底する観点から、2024年8月30日付けで公布されたGMP告示により、錠剤、カプセルといったいわゆるサプリメント形状の製造加工等においてはGMPへの準拠が義務化されました。
GMP:Good Manufacturing Practice(適正製造規範)とは、原料の受入れから最終製品の出荷に至るまでの全工程において適正な製造管理と品質管理を求めるものです。
具体的にGMP管理対象となる施設は、錠剤やカプセルをつくる工場と一次包装工場で、錠剤やカプセルが直接触れない二次包装工場は管理の対象外、機能性関与成分を含む原材料の製造についてはGMP管理が“望ましい”にとどまりました。
告示に示された規定が守られているかどうかの確認は、届出者の自己点検に加え、消費者庁が食品表示法に基づく立ち入り検査等を行うとされています。
なお、GMPの要件化については2026年8月31日まで経過措置期間が設けられています。
出典:消費者庁「2025年3月17日開催 機能性表示食品制度に関する説明会資料」
3. 表示について
2024年8月23日付の食品表示基準の一部改正の内容から変更はありませんが、表示の在り方の見直しにあたっては、消費者に商品の情報が正しく伝わることと、「機能性表示食品であること」の視認性の確保が非常に重視されたそうです。2025年3月の説明会資料では具体的な例が示されましたが、このコラムでは表示の変更点に関する概略をお伝えし、具体例を含めた詳細については別のコラムで解説します。
■ 容器包装上の表示の在り方の見直しについて
出典:消費者庁「2025年3月17日開催 機能性表示食品制度に関する説明会資料」
■具体的な表示方法
(ア) 機能性表示食品
「機能性表示食品」である旨が消費者にわかりやすいように、容器包装の主要面の上部に文字を枠で囲んで表示する。“枠で囲んで”とあるので、枠線なしで色を付けて枠で囲ったように見せるのはNG。色の指定はないので枠の色は何色でもOK。
(イ) 届出番号
機能性表示食品である旨の表示に近接した箇所に表示します。
例では下になっていますが、あくまで“近接した箇所”なので横でもよい。
(ウ) 機能性
機能性表示にもとづくキャッチコピーは、食品表示基準並びに景品表示法的観点から抜き出し表示はNG。機能性関与成分が有する機能性であることや、「報告されている」旨を的確に表示します。
別の書き方として、「〇〇(機能性関与成分)の研究報告による」という表記が例示されています。
機能性関与成分が複数含まれる場合は、それぞれの成分名とその成分が有する機能性が1対1で対応するように示す必要があります。
(エ) 機能性及び安全性について国による評価を受けたものではない旨
定型文が次のように変更されました。定型文ですので一言一句正確に記載する必要があります。
「本品は、特定保健用食品と異なり、機能性及び安全性について国による評価を受けたものではありません。届け出られた科学的根拠等の情報は消費者庁のウェブサイトで確認できます。」
(オ) 摂取上の注意
医薬品及び他の機能性関与成分との相互作用、過剰摂取等に係る注意喚起等について、含まれる機能性関与成分の安全性に関する科学的根拠を踏まえて具体的に表示します。
(カ) 疾病の診断、治療、予防を目的としたものではない旨
医薬品と異なり、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではない旨又は医薬品ではない旨を表示します。
これまでの定型文に「医薬品と異なり」という文言が追加されました。
(キ) 医師、薬剤師への相談喚起
疾病に罹患している者は医師に、医薬品を服用している者は医師、薬剤師に摂取について相談すべき旨を表示します。
これまでの定型分に「摂取について」という文言が追加され、何について相談するのかが明確になっています。
GMPの要件化と同様に表示についても2026年8月31日までの経過措置期間が設けられていますが、あくまでもこれは改正前の食品表示基準に基づく表示の印字がされた包材から切り替えるためです。経過措置期間だからといって、新たな届出において旧基準の表示見本を提出した場合は差し戻しを受けますのでご注意ください。
4. 専門家に意見を聴くしくみについて
これまで届出がされたことがない新規の機能性関与成分で届出をする場合は、機能性表示の裏付けとなる安全性や機能性の課題について、医学や薬学の専門家の意見を聴く仕組みが導入されました。特に、医薬品との相互作用や機能性関与成分同士の相互作用が、表示見本の「摂取上の注意」に適切に反映されているかがチェックされます。
これに伴い、確認の期間が通常の60営業日から120営業日になります。
実際の運用としては、まず届出を提出すると消費者庁が専門家に意見を聴く対象になるかどうかを判断し、対象となる場合は2週間ほどで届出事業者にメール連絡が来ます。
対象となった場合は、確認期間が120営業日とされていますが、必ずしも120営業日かかるわけではなく、早く結果がでれば、届出から60営業日経過すれば販売可能です。
なお、新規の機能性関与成分だけでなく、複数の機能性関与成分を含む場合に過去に届出がされたことがある成分であっても、その組み合わせが初めての場合も対象となる点に注意が必要です。
出典:消費者庁「2025年3月17日開催 機能性表示食品制度に関する説明会資料」
5. 科学的根拠の質の向上について
PRISMA2020の内容が届出等告示に記載され、SRのPRISMA2020準拠が義務化されました。(PRISMA2020の詳細については、こちらのコラムをご覧ください)
4月1日に更改された届出データベースでも、検索結果の一覧にてPRISMA2020に準拠した届出であるかどうかがわかるようになっています。
また、旧届出マニュアルに書かれていた科学的根拠に関する内容も告示に記載され、臨床試験やSRを行う際にはこれまで以上に注意する必要があります。
特に、機能性の実証に係る項目(主要アウトカム評価項目、副次アウトカム評価項目、試験デザイン、介入、適格性等)に関して正規の手続きを踏まず、事前登録後に実質的な変更を行った研究は、機能性に係る科学的根拠として使用できなくなりました。これは、最終製品を用いた臨床試験に関する項目として告示に記載されている事項ですが、SRにも同様の考え方が必要と考えています。仮にSRは対象外ということであれば、臨床試験での届出ができないのであれば、その論文1報を用いてSRを作って対応しようということにもなりかねません。このことについては、機能性の科学的根拠の質を向上させるということを目的とした改正であることを考えるとSRも同じ考え方で評価するべきと考えられます。あくまで、私たちの考えであり、現時点では明確な回答はでていませんが、これまでは使用できていたSRに該当する研究が含まれていた場合、そのSRはそのままでは使えなくなる可能性もありますので非常に影響の大きな変更点です。
これらと併せ届出資料にも変更があり、新たに別紙様式(Ⅴ)-1-2と(Ⅴ)-17の作成、別紙様式(Ⅴ)-6の記載の明確化が必要になりました。
届出製品に関する情報やどのSRを使用したかを宣言する(Ⅴ)-1-2と、SRで評価された機能性と届出製品で表示する機能性との関連性等を説明する(Ⅴ)-17は、必ず届出者が作成することとされており、SRの内容そのものやSRの結果から言える食品性状や機能を説明する(Ⅴ)-4~16については必ずSR主宰者が作成することとされています。
これは、SRの作成者(主宰者)と届出者が違う場合、具体的には原料メーカーやOEMが作成したSRを届出者である販売会社が使う場合に、届出者がSRを修正してしまうことにより科学的根拠が適切に表示に表現されないという問題点に起因しています。
文献検索のフローチャートを示す様式(Ⅴ)-6については、新たに「先行研究」という項目が設けられ、同一SR主宰者の作成したSR内の論文を網羅的に収集することが求められています。
■SR資料への関与者の明確化
出典:消費者庁「2025年3月17日開催 機能性表示食品制度に関する説明会資料」
6. 自己点検について
公開されている機能性表示食品に関する届出に関する自己点検及び評価、結果の報告が義務化されました。自己点検では、主に①機能性関与成分の安全性及び機能性について新たな知見が得られた時に報告しているか、②生産・製造及び品質の管理に関する事項が守られているか、③健康被害の情報収集及び提供に関する事項が守られているかを届出者自らチェックします。
自己点検の頻度は年に1回で、1回目の報告は届出番号が付与された日の1年後、2回目以降の報告は前回の報告月の末日の翌日から起算して1年後とされています。
2025年3月末までに届出されたものは、2025年度中の報告が必要です。
自己点検は、届出の「別紙様式(Ⅶ) 遵守の状況等の自己点検及び評価に関するチェックリスト」に沿って行い、「様式Ⅶ 自己点検等報告」にある項目を入力、「別紙様式(Ⅶ)」のチェックリストを添付する形で届出データベースから報告を行います。
自己点検をしないと機能性表示食品の要件を欠くことになるため、最悪の場合は表示が差し止めとなる恐れがあるので、自己点検は忘れずに行いましょう。
期限内に自己点検が行われなかった場合は、データベースにて届出の編集もできなくなります。
出典:消費者庁「2025年3月17日開催 機能性表示食品制度に関する説明会資料」
7. 届出様式の変更について
届出様式も届出等告示が出されたタイミングで新しい様式に変わっています。
主な変更点は以下のとおりです。
- これまで様式Ⅰに記載していた「当該食品の安全性に関する届出者の評価」及び「当該食品の機能性に関する届出者の評価」については、それぞれ様式Ⅱ及び様式Ⅴに記載するようになった
- これまで別紙様式2であった「届出資料作成に当たってのチェックリスト」は別紙様式(Ⅰ)になった
- これまで別紙様式(Ⅲ)-1-2であった「製造及び品質の管理に関する情報(天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品)」は、(Ⅲ)-1-1に。(Ⅲ)-1-2は、その他加工食品用の様式になった
- 別紙様式(Ⅴ)-1-2の追加
- これまで別紙様式(Ⅴ)-16であった「研究レビューの結果と表示しようとする機能性の関連性に関する評価シート」は別紙様式(Ⅴ)-17になった
- 新書式での別紙様式(Ⅴ)-16は、SR主宰者がSRの結果から言える食品性状や機能を説明する様式になった
- これまでの様式Ⅶは廃止され、様式Ⅶとして遵守事項の自己点検等報告が追加
8. 届出データベースの更改について
届出データベースについても、4月1日に新たなデータベースに更新されました。
主な更改内容は以下のとおりです。
■消費者向け
● スマートフォン対応
● 検索機能の強化
・半角・全角の表記揺れに対応
・キーワード検索機能の追加
届出番号・届出者名・商品名・食品の区分・機能性関与成分名・機能性表示・摂取する上での
注意事項・名称を対象に検索できる
・ 絞り込み検索機能の強化
届出番号、届出者名、商品名など、届出情報の各項目で絞り込んで検索ができる
● SRのPRISMA声明の準拠状況を検索結果の一覧画面で確認可能に
■事業者向け
● 新旧対照表及び変更履歴の自動作成機能の追加
● 変更届出と販売状況等更新の同時提出が可能に
● ユーザー認証がGビズIDに。それに伴い複数アカウントの作成と同時ログインが可能になった
● 自己点検報告機能の追加
● 届出等告示に合わせた様式の修正
9. 終わりに
2025年3月25日に発出された届出等告示の内容は、2024年8月23日付の食品表示基準の一部改正やこれまでに消費者庁から説明されてきた内容と大きな違いはないことから2025年4月1日から施行されています。
とはいえ、SRのPRISMA2020準拠や機能性の科学的根拠の厳格化、自己点検など届出しようとする事業者にとって影響の大きな事項も含まれています。
繰り返しになりますが、今回の法改正のポイントはこれまで「マニュアル」にあった届出様式とその記載要領が「告示」に引き上げられたこと。
告示に記載された遵守事項にしっかり対応していくために、正しい制度理解に努めていきましょう。制度の理解に自信がない方や、具体的な対応策がわからないという方は、お気軽にご相談ください。
■参考資料
1. 内閣府告示第三十五号
機能性表示食品の届出等告示(令和7年3月25日内閣府告示第35号)
2. 機能性表示食品の届出等に関する手引き
3. 機能性表示食品制度届出データベース 届出マニュアル(食品関連事業者向け)
機能性表示食品制度届出データベース届出マニュアル(食品関連事業者向け)_統合版
4. 消費者庁食品表示課「機能性表示食品制度に関する説明会」資料 2025年3月

機能性表示食品の開発・届出を支援する妖精。
木ノウ精くん