皆さん、こんにちは!
機能性表示食品の開発・届出を支援する妖精「木ノウ精」です。
GWが目前に迫った2025年4月21日現在、久々の長期連休に心を弾ませながらこの記事を執筆しています。(浮かれているからといって記事の内容はきちんと精査していますのでご安心ください。)
機能性コラムvol.8では4月1日の機能性表示食品制度の改正内容全般について、vol.9では表示の新基準にフォーカスし一歩踏み込んだ説明をしました。
そして今回のvol.10では、4月1日より新たに対応が必要となった「自己点検」について詳しく見ていきたいと思います。
現段階では、公開されている手引きや届出様式(様式Ⅶ)からわかる、あるいは推測される対応方法を説明し、後日実際に自己点検を実施してどうだったかという実体験にもとづく内容をお伝えする予定です。
1. はじめに:自己点検導入の背景
自己点検については、紅麹関連製品による健康被害を踏まえた機能性表示食品制度の信頼性確保のための措置の一つとして、「届出後の定期的な自己評価・公表、届出後の遵守事項の遵守を要件化する」という話がでてきたのが始まりです。
届出者が届出後の遵守事項を遵守していることを定期的(1年に1回)に自己評価し、その結果を消費者庁に報告する必要があります。期日までに報告がない場合は、機能性表示食品としての要件を満たさなくなり、当該表示ができなくなります。
■自己点検及び評価結果の報告期日
1回目の報告:届出番号が付与された日から起算して一年を経過する日
※2025年3月31日までに届出番号が付与された届出は、2025年度中
2回目以降の報告:前回の報告月の末日の翌日から起算して一年を経過する日
なお、自己点検のタイミングは、報告期限の3ヶ月前と1ヶ月前に、届出担当者の連絡先メールアドレス宛に通知メールが届くことでわかるようになっています。併せて自己点検報告期日が1ヶ月以内の届出がある場合は、届出データベースにもアラートメッセージが表示されます。
更新期日が過ぎても報告がされていない場合にも通知メールが届きますので、万一過ぎてしまった場合は速やかに対応するようにしましょう。期日を過ぎてしまうと届出データベースの操作が一切できなくなりますので、データベース上で操作をする際には、期限超過通知メールに記載のある問合せ先(消費者庁 食品表示課 機能性表示食品制度担当)への連絡が必要です。
2. 自己点検のポイント
自己点検が必要なポイントは大きく3つあります。
● 安全性及び機能性の根拠に関する事項
● 生産・製造及び品質の管理に関する事項
● 健康被害の情報の収集及び提供に関する事項
それぞれのチェック項目の詳細とチェックの仕方について詳しく見ていきましょう。
3. 安全性及び機能性の根拠について
届出に係る機能性関与成分の安全性と機能性について、新たな知見が得られた場合、当該知見の内容を遅滞なく消費者庁長官に報告しているかどうかをチェックします。
届出者自身が文献検索等によって新たな知見がないかを確認することもできますが、多くの場合は機能性関与成分を含む原料のメーカーから情報提供を受けることになると思われます。消費者庁主催の説明会では、調査と報告に例えば2年など大きな差がある場合は別として、新たな知見の調査時期と報告時期にズレがあることは許容されるという話もありましたので、年に1回など決まった時期に調査を行うことを計画している原料メーカーが多い印象です。
自身で調査をするのが難しい届出者は、対象となる機能性表示食品の製造を委託しているOEMや機能性関与成分を含む原料のメーカーに相談されるとよいと思います。
4. 生産・製造及び品質の管理について
届出食品の製造施設及び従業員の衛生管理が届出された体制(別紙様式(Ⅲ)関係に記載)により製造されていることを確認します。特に「錠剤、カプセル剤等食品(いわゆるサプリメント形状の食品)」の場合は、GMP告示で定める基準に即して製造されていることを確認する必要があります。GMP認証を取得している製造所であれば概ね問題はないと思いますが、あらためて告示の内容に沿って管理体制を確認するとよいでしょう。
より具体的なチェック項目として、次のようなものがあります。
● 機能性関与成分を含む原料の規格書等を届出者が保管しているか?
→保管していない場合は、原料メーカーや製造委託先のOEMから規格書等の資料を提供してもらうようにしましょう。
● 届出食品の規格が適切に定められているか?
→残留農薬など、食品衛生法に定めのある基準や規格に適合しているか? 機能性関与成分の含有量の下限値(安全性確保のために必要であれば上限値も)が定められているか? 安全性を確保する必要がある成分がある場合(別紙様式(Ⅲ)-3、エキス等の場合は別紙様式(Ⅲ)-4に記載)はその規格が適切に定められているか? 錠剤、カプセル剤等食品における崩壊性など、その食品を特徴づける規格が適切に定められているか?などを確認します。
● 規格外の製品の出荷防止、運送・保管中の事故防止など、規格に適合した製品だけが消費者のもとに届くような体制が整備できているか?
→工場からの出荷と、保管倉庫等から消費者宅や店舗への配送などいくつかのパターンが考えられます。OEM等に製造を委託している場合、工場からの出荷についてはOEMの管理体制を確認することになりますが、GMP告示の規定が守られていれば問題ないはずです。一方で製品在庫の保管場所や消費者宅への配送は届出者が管理しているケースも多いと思われますので、保管・配送中の品質劣化や破損等の事故を防止するしくみについて自ら点検を行うことになるでしょう。
● 届出後も定期的に機能性関与成分の試験検査が行われているか?
→OEM等に製造を委託している場合は、予め「製造ロットごと」「年1回」など、試験の実施頻度を取り決めておき、取り決めどおりに実施してもらうのがおすすめです。届出者が自ら分析を行うあるいは外部に分析を委託している場合は、自らの実施状況を確認しましょう。
● 健康被害が発生した場合に備え、因果関係確認に必要な数量のサンプルを適切に保管しているか?
→OEM等に製造を委託している場合は、製品等の保管サンプルの扱いについてはOEMに確認することになります。確認にあたっては、必要な数量が保管されているかということに加え、保管条件も重要になります。
● 製造等に関する文書や記録が保存されているか?
→OEM等に製造を委託している場合は、OEMに確認することになります。
● 生鮮食品について遵守すべき事項が守られているか?
→主に生鮮食品の特性に応じた均質性(バラツキ)とその管理について確認します。
■GMPに準じたチェックポイント(錠剤、カプセル剤等食品)
出典:消費者庁食品表示課「機能性表示食品制度に関する説明会」2025年3月
加工食品、特に錠剤、カプセル剤等食品においては、OEMに委託して製造している場合が多いと思いますので、製造委託先のOEMに必要な情報を提供してもらうことになります。とはいえ、GMP告示にも「届出者は、届出に係る天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品を製造等する者がこの告示に従って製造等を行うことを確保しなければならない」と明記されていますので、自己点検についてもOEMに確認を丸投げするのではなく“届出者自身が確認する”ということが必要です。
5. 健康被害の情報の収集及び提供について
医師の診断を受けた結果、届出食品に起因する又はその疑いがあると診断された健康被害情報を収集するとともに、その発生及び拡大のおそれがある場合に、都道府県知事等と消費者庁長官に情報提供をしているかどうかをチェックします。
情報提供はどちらに対しても厚生労働省により定められた「情報提供票」に必要事項を記載してメールで提出する形になります。情報提供先は、都道府県の場合は管轄の都道府県に確認(通常は管轄の保健所の食品衛生課等で、県や市のホームページから連絡先を調べることができると思います)することとされており、消費者庁は食品表示課保健表示室機能性表示担当(g.kinousei@caa.go.jp)となっています。
また、適切な報告(情報提供)ができているかの確認と併せて、消費者から健康被害に関する情報を得た場合には医師への診察を勧める等適切な対応ができているかの確認も行います。
■機能性表示食品における健康被害情報の収集等の流れ
出典:消費者庁「機能性表示食品制度に関する説明会」2025年3月
6. 自己点検及び評価結果の報告の仕方
自己点検の報告は、2025年4月1日以降の届出書式の新様式にある「様式Ⅶ 自己点検等報告」及び「別紙様式(Ⅶ)遵守の状況等の自己点検及び評価に関するチェックリスト」を使って届出データベースから行います。
出典:消費者庁「機能性表示食品制度届出データベース 届出マニュアル(食品関連事業者向け)」P254
■様式Ⅶの入力の仕方について
まずは「安全性及び機能性の根拠に関する事項の遵守状況について点検を行っている」、「生産・製造及び品質の管理に関する事項の遵守状況について点検を行っている」、「健康被害の情報の収集及び提供に関する事項の遵守状況について点検を行っている」、「食品表示基準別表第26 に掲げる事項について点検を行っている」の4項目に対して「はい」のボックスにチェックを入れます。
「チェックリスト(公開)」の欄には、点検状況を記載した「別紙様式(Ⅶ)遵守の状況等の自己点検及び評価に関するチェックリスト」を添付します。
「試験成績書(非公開)」の欄には、届出後に実施された機能性関与成分の試験成績書を添付します。
■チェックリスト(別紙様式(Ⅶ))の書き方について
チェックリストの小項目について点検を行い、それぞれ①、②など、該当する選択肢を、該当しない場合は「×」を選択します。
選択肢の中で、「×」「①から③のいずれにも該当しない。」「①及び②に該当しない。」「今回の報告期間に試験検査を実施していない。」を選択した場合は、理由を記載する欄にその理由を簡潔に記載する必要があります。
チェックリストの最後には、届出食品が錠剤、カプセル剤等食品の場合に、機能性関与成分を含む原料について安全性を点検しているかどうか?という問いもありますので、「○」か「×」を選択し、「×」を選んだ場合はその理由を記載する必要があります。
7. 終わりに
自己点検としては、2025年3月31日までに届出番号が付与された届出が最初の対象になります。これらは2026年3月末までということでまだ時間的に猶予があるものの、正解がまだ出ていない中、早めに対応しておこうということで、相談をいただくケースもでてきています。
猶予があるとはいえ、自己点検をしないと機能性表示食品としての要件を欠くことになりますので、必要に応じてOEMや機能性関与成分を含む原料のメーカー等に情報提供を受けながら、早めの対応をされることをおすすめします。
■参考資料
1. 内閣府告示第三十五号
機能性表示食品の届出等告示(令和7年3月25日内閣府告示第35号)
2. 機能性表示食品の届出等に関する手引き
3. 機能性表示食品制度届出データベース 届出マニュアル(食品関連事業者向け)
機能性表示食品制度届出データベース届出マニュアル(食品関連事業者向け)_統合版
4. 消費者庁食品表示課「機能性表示食品制度に関する説明会」資料 2025年3月
5. 内閣府告示第百八号
機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の製造又は加工の基準
6. 機能性表示食品等に係る健康被害の情報提供に関するQ&A

機能性表示食品の開発・届出を支援する妖精。
木ノウ精くん